物件概要

都会の住宅密集地で、プライベートを保った庭を得る事が希薄になりつつある現代において、外部と内部の統一感が感じられる建物を目指した。

庭にこだわりを持った建て主様のご要望で、リビングを敢えてセットバックさせ、大きなバルコニー空間を設けた。 リビングからバルコニーへ出るサッシは、細いスチールフレームをデザイン。形材を使用しているため軽やかで滑らかな開閉ができ、フルオープンとなることで、開放感を演出。床の凹凸を無くしたことでストレスなくバルコニーへ移動が可能となっている。 リビングから屋上に繋がる動線と空間は、外部と内部との一体感が生まれることから、1つの空間として捉えており、リビング空間を設計するときと同じ熱量を込めて設計。屋上を永く、心地の良い空間として使ってもらうために、植栽で囲み、癒しの空間としてジャグジーを設けた。都心に居ながら開放感とプライベートが保たれた特別な屋上庭園となっている。

階段の手すりは、沈み感や強度、つなぎの感じなど毎回考える部分だが、やはり使いやすいことが1番重要となる。それによりリズム感や安心感が表れ、突き詰められたディテールの美しさが際立つ。 持ち手は1階から最上階まで繋がっており、現場で溶接・R加工・研磨をすることで、フラットで滑らかな仕上がりとなった。ワイヤーは外から貫通させてボルト締めし、端部をカットし表面を研磨・塗装することで内側から引っ張っているような仕上げとしている。

住む人や街に対し、「正直なデザイン」をすることで、使いやすさや安全性、無駄がそぎ落とされたディテールの鮮麗さが感じられる建物となった。

（芦沢啓治建築設計事務所／芦沢啓治氏・川見憲史氏　談）