296ティノラス神宮前ビル
物件概要
- 用途
- 店舗
- 企画・プロデュース
- en one tokyo
- 設計・監理
- ケース・リアル+渡辺淳一建築設計事務所
- 構造設計
- オーノJAPAN
- 照明計画
- BRANCH LIGHTING DESIGN
- 植栽計画
- GREENETTA
- 構造
- RC造(一部鉄骨)
- 場所
- 渋谷区
- 規模
- 地下1階・地上2階
物件概要
「ティノラス神宮前ビル」は、躯体・サッシ・手摺と、建物としてはシンプルな構成での計画であったため、そのなかで「ここだけにしかないモノ」となるよう随所に工夫を施した。
手摺は「細く・ミニマムに」という意識も持っているが、プロダクトやインテリア設計の目線から見たときに、「あるべき要素は造形としてしっかり考えたほうが良い」という想いのもと、製品の安全性や耐久性を十分に確保した上でデザイン性と設置方法を検討した。幅は65㎜と幅広だが、厚みを6㎜の縦格子とすることで重厚感はありつつもラインを細く魅せる工夫を施した。また、無柱空間とした躯体はスラブ厚300㎜、壁厚280㎜と質感の重さを感じるが、手摺の重厚感と細いラインが相まってファサードの透け感を向上させている。
無柱空間を最大限活かすため、外部照明などの凹凸は出来る限り減らすように心掛けた。なかでも共用部の天井照明をどうするか考えたとき、設置箇所として唯一目に入る構造部の円柱に着目。しかしテラスとして人が往来する箇所に、ただ照明器具を備え付けるのでは耐久性に不安が残る。そのため、人が乗ったり座ったりしても問題ないよう耐久性を持たせたアッパーライトを制作。天井にハレーションさせることで照度も確保し、且つ照明器具の凹凸のないフラットな印象のまま納めることができた。
テナントビルとして1番の顔である1階床のコーナーを空けることで、空気の塊を感じられる吹き抜けとなった。同時に、道路面にスラブが迫り出していることで、ヴォイドがあるにもかかわらず、建物の輪郭が生まれている。また視線が遠くに向かうようになり、ガラスを通し1階から地下階の床、対角側の道路を抜けた先など、通常よりも遠くに視線が伸びていく。建物に奥行きが生まれ、まるで「見えないファサード」が存在しているようだ。
シンプルな構成ではあるが、随所にこだわりが詰め込まれた「ティノラス神宮前ビル」は、街角の一画のテナントビルではなく、街並みというパズルのピースの一片として、これからも愛され続けるだろう。
(ケース・リアル/二俣公一氏・渡辺淳一建築設計事務所/渡辺淳一氏 談)