株式会社辰

287-2上北沢S-Atelier

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物件概要

用途
事務所
設計・監理
エトルデザイン
構造
RC造
場所
世田谷区
規模
地上3階
SHIN CLUB掲載あり

物件概要

建て主様との出会いは、お互い材木に対してのこだわりが通じてのことだった。木材アートを通じ材木と深く関わりを持つなかで、営業の窪田さん(㈱辰)から、「材木についてお話を聞きたい」として建て主様を紹介していただいたことをきっかけに、上北沢駅前の区画整理のお話しを伺ったことで、今回の計画がスタートした。

住宅と違いプログラムが少ない分、共用部や多目的なところで面白さや豊かさを持たせたいと考えるが、計画地は西側と北側からの斜線規制が厳しい。上北沢駅のホームからも良く見え、人の目に留まるため1つの「ランドマーク」として見たとき、どういったものが良いか思考を凝らした。

その1つが「手摺」。テラスを計画するとモダンになりづらいのはなぜかと考えていたが、通常の納まりで計画すると「柵」となるため、外観から見たときのスマートさをつくりたいと考えた。「上北沢S-Atelier」では、外壁面と手摺の仕上げ面を揃えて設置。天端の芯寄りに固定した角パイプから手摺を持ち出し、フラットバーで固定することで外壁面と揃うよう計画した。また線材を増やすことで、まるで外壁から伸びているように見える工夫を施した。シンプルで単純に見えるが、施工上はとても難易度が高く、幾度の検討と検証を経て出来上がったその姿は実にスマートで、ランドマークとして駅から望む凛とした佇まいに幸甚の想いであった。

建て主様から「自然木をどのように使おうか」という想いに対し、建て主様が所有する、およそ200年程前の大きな蔵へ共に赴き、貯蔵された数多の貴重な古材から選別し家具を制作。経年などで割れた部分には補修技法の「ちぎり」を用い、その様もデザインとして用いることで、唯一無二の趣のある家具が出来上がった。

今回の計画を経て、これからの建築業界はRC造と木造の混合建築が多く普及する世に変化するだろうと感じた。その背景には資材や人件費の高騰が密接に関係しており、計画によってはRC造部分のコンクリが固まった後に木造の構造部が建てられ、脱型時には全フロアの内装工事に取り掛かることが可能なため、工期短縮、予算や材料費も押えることができる。それには設計者の提案力と仮設計画や工程表への理解が必要となり、知識向上と現場経験を積む必要があるが、「地球」という大地を掘り上げ、そこに「建築物」という構造物を創ることができると考えると、とても心踊り、建築家という職業がいかに面白い仕事かと思わせてくれる。そしてそれは更なる向上心へと繋がる原動力となり、日本の新しい建築の変化へも対応することができるだろう。



(エトルデザイン/高山まさき氏 談)