株式会社辰

287-1Arrows aoyamaⅡ

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物件概要

用途
店舗
設計・監理
團紀彦建築設計事務所
構造
RC造
場所
港区
規模
地上3階(増築部分:地上2階)
SHIN CLUB掲載あり

物件概要

青山通りから小道を入った場所に位置する「Arrows aoyamaⅡ」は、青山通り、表参道、明治通りに囲まれた約50ヘクタールのエリア「青山三角地帯」にあり、私はよくこのエリアをお饅頭のカワとアンで例えるのだが、各通りから三角地帯内部(アン)に入るとき、接道沿いの建物の奥行(カワ)が大きければ大きいほど、誘導的な「何か」がない限り、小道へ入る人の流れが生まれづらい。そのため、「この小道の先には何かあるな」という気配を感じ取れるような建物計画をおこなう必要があると考えた。

物語の第1章である「Arrows aoyama」では、小道を覗いたときにテナントの雰囲気が伝わるよう、青山通り側面に大きな窓を設けたため、第2章である「Arrows aoyamaⅡ」もその誘導を活かし、前面に大きなガラス開口を設置し、テナント内部が望めるよう意図した。また、2棟の建物がもともと1つの建物として計画されたかと思えるよう、前面をヤードスペースにし、第1章から第2章へ続く統一空間とした。それはまるで「時間との共生」を具現化し、5年の時を経て今なお新しい物語をスタートさせる建物となった瞬間であった。

計画当初はそれぞれ別の建物とすることもできたが、2階へのアクセスに既存の階段を使用し、1階部分の階段計画を省くことで最大面積を確保できることが判明したため、増築という計画とした。 地震力に対し、建物の構造計算上それぞれ分断させる必要があるため、2階の接続部分にエキスパンションジョイントを用い、地震力に対する抵抗を分断させている。

今回のようなケースは非常に稀で、1度完結した建物に対し、新たに物語を接合する様は、まるで「連歌」のようで、姿かたちを変え新しい物に生まれ変わっていった「Arrows aoyama」は非常にワクワクした計画であり、私の思い描いていた「境界線の縫合」を試みた1つの実例となった。

1つ1つはバラバラだが、境界線の重要性を再認識し設計計画に取り入れることで「都市の増殖」が生まれ、先進国である日本の建築レベルの高さを象徴する「新しい界隈性のある街・東京」として、良い形の街並みへと変化してくれることを、切に願っている。



(團紀彦建築設計事務所/團紀彦氏 談)