250-2千駄ヶ谷駅前公衆便所
物件概要
- 用途
- 公衆トイレ
- 設計
- 谷尻誠・吉田愛/SUPPOSE DESIGN OFFICE
- 竣工年月
- 2020年8月
- 構造
- RC造
- 場所
- 渋谷区
- 規模
- 地上1階
物件概要
谷尻:渋谷区は、2020東京オリンピックを機に、国立競技場の目の前にある「千駄ヶ谷駅前公衆便所」のリニューアルを計画した。(日本財団が行った16人の建築家による「THE TOKYO TOILET」プロジェクトとは別)そのプロポーザルで我々は、「機能を満たすこと以上にトイレ自体を目に留まる公共建築と捉え、観光で巡ることもできるような付加価値を持つことが大切」という話をさせていただいた。
吉田:首都高速高架線の下と地下鉄出入口の間という平面の広がりを得られない場所ではあったが、アートのような空間体験の面白さを出したいと考え、一つの塊としての彫刻のような在り方、ある種の違和感を街の中に出すため、建物を過度に大きくしている。 それはトイレの持つ「行き止まり感」「狭い」「臭い」というマイナスのイメージを払拭するためでもあった。そして中心にトイレブースや手洗い等の必要な機能を固め、本来閉じるべきコンクリートの外壁の四周を地面から50㎝浮かせ、空気が入り、光が入ることで「内」と「外」という明確な境界をぼやけさせている。
谷尻:建物に透明性が出て、人の気配を感じ取れる安心材料になっている。コンクリートの重量感を開放するような「重たいのに軽い」という矛盾、「閉じた外壁と開かれた内部空間」が持つ「対比」はアートに重要な要素である。
吉田:内部の壁は「リタメイト」によりコンクリートの硬化を遅らせ、「洗い出し」効果の仕上げにより質感を出した。一方、トイレブースにはアコヤ材や真鍮のサインなどホテルのような佇まいを持たせ、利用者の丁寧なふるまいを引き出すようにしている。 手洗い場は入口の正面に一つだけ設置し、男性・女性が関係なく利用できる。入口から男女別である既存のトイレの仕様より、誰にとっても合理的、機能的な環境となっている。
谷尻:メンテナンス面でも清掃が1か所で済む。ジェンダレスの時代、世界中から訪れる人のためにも総合的な判断が働いている。
吉田:建物両端には、車いすの旋回スペースを設け、その壁にはギャラリースペースも設けている。街をめぐる更なる楽しみにもなることだろう。
(谷尻誠氏・吉田愛氏/SUPPOSE DESIGN OFFICE 談)