243-2㈱洋菓子舗ウエスト 日野工場/配送センター
物件概要
- 用途
- 事務所・店舗・配送センター
- 設計
- 鈴木孝紀/鈴木孝紀建築設計事務所
- 竣工年月
- 2020年2月
- 構造
- S造
- 場所
- 日野市
- 規模
- 地上3階
物件概要
菓子製造工場と配送センターの新築計画である。計画に先立ち山梨と日野の工場に見学に行った。工場長から「こんな感じの大きさの部屋」などのスケッチを見せていただいた。それから2つの工場を2度、3度と訪れるうちにウエストの菓子作りをやっと理解した。それまではお菓子作りとはベルトコンベアで自動的に流れてくるものとばかり思っていたからだ。 ウエストのお菓子づくりはそうではなく、職人さんが手作りで一つずつ、丁寧に作り上げる「人間が主体」の現場である。気持ちよく、快適な職場環境でないといいものができない。どういう動きをしたら、スムーズに商品を作ることができるのか、部屋の広さ、作業の動線、一日の流れ、商品の出荷まで、人間を主体に建築を組み立てていくことになった。
2,165㎡の敷地は再開発地域の一区画で、延床面積3,620㎡に工場・事務所・配送センター・売店の入るエリアと、食堂や従業員の休息の場となるエリアの構成である。 建物の東側にはコンビニの配送センターがあり、四角い建物に合わせて無駄のない形のファサードとした。一方、西側は住宅が多い。集合住宅に近い雰囲気で凹凸をつけた外観、植栽にも垣根のように見える樹種を用いた。
東の工場エリアの1階は、事務室と配送センター、製品の出荷ヤードである。東南側のコーナーに直売店を配置、亜鉛メッキのフレームで庇を設け、小さな庭も設けている。西エリアとの間に工場出入口に続くアプローチが伸びる。2階は商品の梱包、仕分けのコーナーである。繊細なクッキーなどは人の手による作業が欠かせない。3階はお菓子の生地を作り、オーブンで焼き上げる製造コーナーである。旧工場から移設の生地作りのミキサー、オーブンなどはいずれも小型で使い込まれている。従業員は入室の際は、前室で手洗いを徹底し、エアシャワーを浴びて持ち場に入る。 西エリアの1階は従業員の入口、2階は男女別更衣室・休息室、3階が食堂となっている。くつろぎの場である食堂は布をつかった空調ダクト「DUCTSOX」を採用した。結露のリスクがなく、優れた通気性で綺麗を保つ、高天井のシステムである。仕上げの材料には少しこだわり、食堂の壁には卵の殻を使ったエッグペイントを使い、休憩室は同様にエッグウォールという壁紙を貼った。床は木の無垢材のフローリングを採用、足触りがよいものにしている。
スタッフの方との検証を繰り返し、ほぼ満足いただけたのはありがたいことであった。
(鈴木孝紀氏 談)