221-2けめともの家・西大井(「幼・老・食の堂」)
物件概要
- 用途
- 看護小規模多機能型居宅介護施設 / 事業所内保育所 / 訪問看護・介護事業所
- 設計
- 金野千恵、アリソン理恵/teco
- 構造設計
- 鈴木啓/ASA
- 設備設計
- 柿沼整三/ZO設計室
- 竣工年月
- 2017年12月
- 構造
- S造
- 場所
- 品川区
- 規模
- 地上3階
SHIN CLUB掲載あり
物件概要
超高齢化社会を迎えた日本の現代社会において、これまでの抽象的な人間をモデルにした施設計画のみでは人の多様性に対応しきれず、空間と人の乖離が顕在化している。一方、老人福祉施設や幼児施設では、規模や共同生活のあり方、在宅介護の仕組みなど枠組みや現場の取り組みにおいてはすでに寛容な試みがさまざまに見出されている。病院施設の延長として考えられてきた福祉に関わる建築を再考し、いかに地域資源を包摂する生活空間として街並みの延長へ位置付けるかが大きな課題となっている。
この計画は、高齢者福祉施設の一種である「看護小規模多機能型居宅介護施設(カンタキ)」に加えて、「事業所内保育所」「まちの食堂」を集めた、地域に開かれたお堂のような建築である。敷地は、品川区の大規模建築を背後に臨む木造密集住宅地の私道に面し、周辺の街並みには、生活感あふれる路地や旗竿空地の抜け感と、建物の反復によって小気味いいリズムが生まれている。このリズムと呼応するようにボリュームをおおらかに分節しながら、北側にカンタキ、南側に保育所を配し、双方の活動があふれ出す中央の抜けの空間をお堂の心臓部として位置付けている。そこにキッチンと地域へ開かれた食堂を設え、幼と老、地域の食を支える空間となることを想定している。
階高の異なるカンタキと保育所の空間は吹き抜けを介してつながり、その大きな気積が温熱環境と人の関係を調整する役割を担っている。さらに、各所に設えたロッジアや窓辺によって外界との多様な交歓を生むとともに、エントランスに設えられたベンチや2階テラス、屋上菜園と立体的に連続する居場所を地域へ開放することで、建物の周縁を含めて地域と施設の相互的なケアが培われる空間となることを期待している。
(金野千恵氏、アリソン理恵氏/teco 寄稿)