194-2アットホーム株式会社本社ビル
物件概要
- 用途
- 事務所・工場
- 設計
- 上村健太郎/建築集団フリー
- 構造
- S造
- 竣工年月
- 2015年12月
- 場所
- 大田区
- 規模
- 地上3階
物件概要
築40年の鉄骨造の本社は、旧耐震(旧建築基準法の耐震基準)による建物で、構造体が老朽化していたことや2011年の東北大震災の影響もあり、このたび安全な建物とすべく建替えることとなった。当事務所は、「アットホーム株式会社」が「不動産ニュース株式会社」であった時代からこれまで約35年、14棟の建物の設計をご依頼いただいており、デザインもさることながら、所長三木の人柄とアフターケアを含めた真摯な監理業務の積み重ねだと思っている。
プランニングのプロセスは至ってシンプルである。1階を工場、2,3階を事務所とし、建蔽率・容積率から見出される、四角い箱として最大限に取れる空間を確保し、上下をつなぐコアの位置をファサード・デザインとアプローチを絡めながら設定している。普段、私はファサードをスタディする上でテンプレートとしてタテ・ヨコ比で黄金比(1:1.618)等を考慮してプロポーションを構成していくが、今回は印刷工場、事務所という先天的な機能を優先させるため、スタディ模型を作成し、数学的な比率に頼らず、自分自身の感覚を信じ、コアの位置・壁の位置等を決定してきた。結果としてコアを除くファサードの長方形部分(工場部分)のタテヨコ比が1:1.66、と黄金比に近いプロポーションになっていたのは、無意識のうちにこの比率が心地よいと自分が感じていたのだと改めて思った。
ファサードのコア部分は、三角形に切り出して上部を開口部、下部をエントランスアプローチとしている。建物の本社としての位置づけも考慮し、社名の頭文字の「A」をモチーフにして、シンボリックなデザインとしている。計画地の大田区西六郷は、中小の工場の多い地域で、いわゆる機能優先でほとんど意匠性のない建物が多い地域だが、今回、新たに2階事務所にはデザインセクションも入るとのことで、工場らしからぬスタイリッシュなデザインを心掛けた。 建物に隣接して、三木が27年前に設計した「アットホームコンピューターセンター」が建っている。今回の建物も壁面との連続性を意識してベージュの壁色を選定しているが、それ以外は次世代の担い手としてモダニズム的であるべく、アンシンメトリーで、仕上げもシンプルな白いプラスターの壁とした。シンボリックな建物という点では以前のものと共通しており、 その理念は引き継いでいるといえる。
(上村健太郎氏 談)