074-1Neri (練馬集合住宅)
物件概要
- 用途
- 共同住宅
- 設計
- 若松均/若松均建築設計事務所
- 構造
- 多田脩二
- 企画・管理
- プロパティデザインオフィス
- 構造
- RC造+S造
- 竣工年月
- 2006年3月
- 場所
- 練馬区
- 規模
- E棟地上3階 W棟地上4階
物件概要
西武池袋線練馬駅から北口へ出て徒歩5分、郊外の密集した住宅地に計画された集合住宅である。建て主は、この地域に長く住み続けており、周辺にもいくつかの賃貸物件を所有されているが、先代から経営を受け継ぐ2代目として、それらが老朽化していく中、今後どのような集合住宅を街に提供するべきか、自らも参加する不動産プロデュース会社に開発計画を依頼した。3人の建築家の案から、与件されたコンセプトに添い、建て主に採用され、実施に至ったのがこの案である。
L字型の敷地に対して、W棟とE棟という2棟の異なるボリューム、仕様のものを配置し、W棟の下の部分はいわゆるピロティと呼ばれるオープンスペースとして、接道の路地を拡張する形で周囲にパブリックな場所を提供している。エントランスでありながら、塀を設けることもなく、駐車場としても、また広場としても利用でき、E棟側へ抜けることで東西に貫く通路を新たに形成している。
集合住宅として通常求められる機能を満たして、自己完結する建物を設計すると、単なる行き止まりの閉じた空間をつくる結果となる。周辺は、緑が多く、簾やよしず、盆栽などを使って境界の固有性を曖昧な形で維持している、下町の風情が残っている場所である。これらの好ましいオープンな関係を壊すことなく、古い住人とこれから移り住む若年の新住民の交流が進むことを意図している。
建物の外観も、コンクリート打ち放しでありながら、ワイヤーをはり、壁面緑化を図る。当初、さび塗装の鋼材を用いた茶色のフレームを想定したが、重量やコスト、避難経路などの関係で、ワイヤーを張るというシンプルな形に落ち着いた。緑が広がり、徐々に建物が街になじんでいく変化を見せてくれることだろう。
躯体は、共有廊下の部分がキャンティとなり、アルミの手すりも極限までそぎ落とされたシンプルなデザインで、マンション固有の空間というより、単なる「道」であること意識している。どこからも視線が行き届き、オープンであることで、却ってセキュリティが高まっている。
(若松均氏 談)