株式会社辰

309ARROWS EAST

物件概要

用途
3所帯・共同住宅
設計・監理
株式会社ティケイスクエア+一級建築士事務所 佐瀬 和穂建築設計事務所
構造
RC造
場所
渋谷区
規模
地上7階
SHIN CLUB掲載あり

物件概要

計画地である渋谷区東は、渋谷・表参道・恵比寿に囲まれた位置にあ り、神社や和風民家が残る昔ながらの顔と、大学キャンパスや高級マ ンションといった新しい顔が混在するエリアである。南から緩やかに 登る傾斜地の境界付近に位置し、複数の用途地域が入り組む都市構造 の「際(きわ)」にある敷地だ。 本計画は、162 ㎡という限られた敷地に実現できるボリュームを探る ところから始まった。建蔽率・容積率を最大限活用しつつ、事業性と 住戸構成を同時に検討した結果、天空率を利用したセットバックによ り、7層の中に3つの戸建が積み上がったような構成に行き着いた。 細長いテラスや住戸ごとに切り替えた仕上げによって、住民が「私の 家」と感じられるような集合住宅を目指した。


住戸A(2階/1層 Flat / 1LDK) 外観は杉板型枠コンクリート仕上げ。内部は壁・床・天井・扉に7種 類のグレーを使いわけ、シックなスタジオのような空間とした。唯一 開かれた北側の前面道路に向けて足元まで開く大開口を設け、安定し た明るさと通風を確保した。LDK 中央の柱2本をつないだ「ブビンガ」 の一枚板カウンターは、旧建物のバーのカウンター材を再利用したも の。柱を家具に取り込み存在感を抑えつつ、回遊性のあるプランとし たことで、窓際は縁側のように、室内側はオフィスのようにも使える 柔軟な住まい方が可能となっている。


住戸B(3・4階/2層 Maisonette / 2LDK) タイル仕上げの外観をもつ住戸B は、ブラックウォールナットと白 ベージュを基調に、ホテルライクな上質さを演出した。特徴的なアイ ランドキッチン(トーヨーキッチン)や大判大理石タイルの壁をもつ LDK は、周囲の視界が開ける4階に配置。「最も長く過ごすLDK を快 適に」という建て主の想いを反映し、多くの開口部によってこの建物 で最も大きく開放的なリビングダイニングとなった。3階には落ち着 いた仕上げの大小2つの寝室と水回りをまとめ、テラスにより回遊で きる構成となっている。


住戸C(5・6・7階/3層・Triplet / 3LDK) 白く塗装された外観が塔のように伸びる住戸C は、内装も白を基調 に、明るいフローリングや白いクロス、天窓や南側の階段室など、周囲 の光や風景を最大限取り込む計画とした。5階のLDK から6階へ階 段を上がると、20 ㎡のルーフテラスとテラスリビングがテラコッタ タイルでつながる、リゾートのように心地よい空間が広がる。最上階 の7階にも在来工法の浴室を設け、地上20m の特別なプライベート 空間を演出している。


計画地に通う中で、7.2m の前面道路は車やバスが頻繁に通る一方、 裏手には閑静な住宅街の雰囲気も漂い、不思議なコントラストを持つ 場所だと感じていた。新しさと懐かしさが共存する多層的な環境の中 で、そこでの暮らし方を想像しながら建築は立ち上がっていった。 「良いものをつくる」という建て主の揺るぎない情熱と、それを建築へ 落とし込む密度の高い設計、そして辰による確かな施工技術が結晶 し、この建築が生まれたと思う。




(髙橋朝義様・佐瀬和穂氏 談)