305神宮前5丁目プロジェクト
物件概要
- 用途
- 店舗
- 設計・監理
- ツチヤタケシ建築事務所/土屋毅・星野杏寿
- 構造
- RC造
- 場所
- 渋谷区
- 規模
- 地上3階
物件概要
屋上庭園の豊かな植栽が印象的な「神宮前5丁目プロジェクト」。コン クリートの硬さを感じるいわば「建物らしさ」よりも、意識したのは山 道を散策するような「自然らしさ」だ。建物の角にも丸みをもたせ、外 壁の質感にもこだわった。当初はガサガサとした岩肌のような外壁をイ メージし、自然の岩を彷彿とさせるような素材感を出すために試行錯 誤。現場からも多くのアイデアを募り、最終的なかたちに落ち着いた。 ハイキングのような雰囲気をかもし出すために、入口の階段にも丸みを 帯びさせ、手すりにもスチールのロープを用いた。各階のテナントを示 す標識も、まるで山の途中で登山者を導く、道しるべのようなデザイン になっている。 コーナーもエッジを効かせたシャープなものではなく、なめらかに上へ とつながるデザインを採用。型枠やスチールドア、手すりの選定に関し ては、多くの事例を参考にした。
こうした「自然」を思い起こさせる工夫に加え、実際にふんだんに植え られた植物の存在も、大きな特徴の1つ。「不動産」という言葉が表す ように、建物はその場から決して動かない。けれどもそこに植物がある と、それは無機物である建物と生きている人々をつなぐ役割を果たし、 建物に生命力を宿す存在にもなる。四季折々のなかでときには風に吹か れ、ときにはたっぷりと日差しを浴び、ときには静かに雨に打たれる植 物の姿とともに、建物の雰囲気も変わって見えるのである。
植物と建物、どちらにもこまめな手入れが必要だ。建物は日々掃除を し、定期的にメンテナンスをし、植物には気温や湿度に気を配って水を やり、必要に応じて剪定をする。手間暇をかけて育てる必要があるから こそ、人は植物に愛着を持つ。神宮前5丁目プロジェクトには、「植物 の世話をするように、建物にも愛着を持ってほしい」という願いが込め られている。
(ツチヤタケシ建築事務所/土屋毅 談)