株式会社辰

303ESCENARIO 若松町

物件概要

用途
共同住宅10戸・長屋10戸
設計・監理
木下道郎/ワークショップ
構造
RC造
場所
新宿区
規模
地下1階・地上4階
SHIN CLUB掲載あり

物件概要

敷地は雰囲気のある路地を抜けた先に位置しており、どこか新たな街へ と広がっていくような建物動線を意識した。


旗竿地の奥は採光が難しく、湿気がたまりやすいなどのデメリットを抱 えているが、敷地中央に中庭を作って光と風を呼び込んでいる。この共 有スペースを中心に、共同住宅10戸と長屋10戸をコの字に配置。住戸 へのアクセスは、すべて共有部を介して行われ、小さな街のような空間 が形成されている。そこに住む人を、温かく包み込んでくれる「守られ 感」。通常のマンションでは得られない空間構成を実現させたマンショ ンである。


さまざまな住まいが建ち並ぶ街並みのように、各住戸は個性あふれるプ ランになっている。メゾネットやルーフトップバルコニーを持つ1LD Kタイプなど、ゆとりある空間のなかに多様な豊かさを散りばめ、部屋 のなかには、できるだけドアなどの仕切りは設けずに空間の広さを優 先。住まいの内外に余白をもつことは、豊かな暮らしの実現に欠かせな いものであり、大きな価値があるものと確信している。床もフロアごと に素材の色を変え、雰囲気の違いを演出している。


「Simple is the best」という言葉があるように、ムダを削ぎ落として 必要なものを残すことは、工業製品だけでなく建物の本質にもつながる 考え方である。たとえば、打放しコンクリートの壁はコスト低減の効果 があるほか、メンテナンスフリーの実用性も併せ持つ。昨今、フルス ペックの分譲マンションが増えているなか、住まいの在り方をもう一度 見つめ直し、よりシンプルで本質的なものへと「原点回帰」する必要性 があるのではないだろうか。


不動産物件は生き物である。新築のときの価値は不変ではなく、時間と ともに変化していく。その都度、適切に手をかけてあげなければならな いのは、人と同じである。設計者のコンセプトを守り、物件の価値を守 り、オーナー様の資産価値を守る。時を経ても価値を保ち続ける「守り 方」を、私たちは模索し続けていきたい。





(株式会社アルファーマネジメント&パートナーズ/米光清史氏 談)