029-3岡本の家
物件概要
- 用途
- 専用住宅
- 設計・管理
- 中村晃/アーキプラス
- 構造
- RC造
- 竣工年月
- 2002年8月
- 場所
- 世田谷区
- 規模
- 地上3階
物件概要
SC30号 トーク 「快適に暮らす」から竣工当時は、設計者であり建て主でもある、中村晃氏に取材をしていなかったため、SHINCLUB105号p4(メンテ魂第13回)で改めて建物について伺いました。
105号メンテ魂より
世田谷区の閑静な住宅街の斜面に建つ「岡本の家」は、自然に囲まれ、シンプルで真っ白な外観が美しい住宅です。建て主の中村氏 がご自身で設計を手がけられています。
竣工当初は外構工事を残されていましたが、少しずつ手を加えられて、1 年半ほど前にほぼ完成しました。同じ斜面の隣地にも家が 建ち、落ち着いた環境が確保されています。
中村氏と奥様にお話を伺いました。
中村 : 話はこの家を建てるときに遡りますが、 実はほかの土地にほぼ建 設を決めていたのです。 が、 この場所を見つけてほとんど一目ぼれ。 遠くに富士山を望める景色の良さ、 緑に囲まれた静かな環境で、 斜面 ということにもかえって設計のやりがいを感じました。
いったんは挫折しか けたのですが、 辰さんに調整いただき、 実際に建てることができました。
奥様 : これまで手を入れたのは、 応接間の床のカーペットを自分たちで 張り替えたこと、 1 階のリビングから、 庭にデッキを設け、 入口にゲート をつけてもらったことでしょうか。
中村 : 今回わかったのは、 「建物は竣工時に全部できてなくてもいい。 逆に、 少しずつ見直しながら、 アイディアをひねって作りこんでいくこと でいいものができる」 ということでした。
完成したら、 夢が終わってしまう でしょう。 未完成だった外構は、 少しずつ手を入れることで次々に新た なアイディアが沸くという感じで、 ほぼ 1 年半前に完成しました。それを 機会に独立し、 自宅で設計事務所を始めることにしました。
この家にクライアントに来てもらって打ち合わせをすると、 100% 皆さん 納得してくださって成約してもらえます。 特に「斜面に家を建てるお客様」 は、 土地が安く手に入った分、 どうすれば建つのか、 工事にどのくら いかかるのかと不安ですから、 実際にプロセスをわかっていただくため に、 モデルルームとして非常に役に立っています。
ただ、その後法改 正があって、 この建物のような同じフロアに混構造のある建物が確認申 請を通すには、 昔より審査に手間取ることになるでしょう。
ここ数年で鉄 骨も値上がりしましたからね。 あの頃、 施工に踏み切ってラッキーだったと思いますね。
<改修設計:樋口誠(ネオタイド建築計画)>
「快適に暮らす」ということは、住まう人の気持ちにそった建物が建ったときに初めて実現するものです。これまで便利で経済的とされてきた、化学製品の負の部分が明らかになるにつれ、それらを使用しないようにしたり、建物のデザインや構造を暮らし方に見合ったものにしたりして、科学的な根拠に基づいた家作りをしていくことはもちろん大切です。
―ガラスの開口部側が鉄骨造で、 斜面の壁側が RC 造ということで、 開放的な空間を生み出しているのですね。
中村 : 隣接する南側の公園の斜面は、 うっそうとしていましたが、 竹 以外の雑木を区に伐採してもらったら、 予想以上に見通しがよくなっ て、新たな景色を楽しんでいます。
それから、近隣にお住まいの方々 には非常に評判がいいです。
高い建物にならないように、斜面に沿っ て建物の 3 階をエントランスにすることで、 周辺の既存の建物の景観 を損ねないように気を使いました。
一方で自然に囲まれているので、この 6 年間のメンテナンスというと、 なんといっても、 設備の故障が大きかったですね。
もうこれはしょうが ないことなんですが、 給湯器が不調なので調べてもらうと、 ガス管に アリの死骸がびっしり詰まっていたり、 エアコンの室外機は鳥が食べ 物を取っておく場所になったり。 鳥には自分の食べ残しを溜める習 性があるそうです。設備業者は「こんなことは都内ではめったにない」 とあきれていました。
奥様:隣の家が建つまでは、 毎日タヌキの親子が通っていましたね。 上のエントランスに池を作って、 水を張ったらカルガモが入ってきた んですよ (笑)
―鳥の鳴き声が聞えて、 ほんとに別荘に来たようです。
中村 : 下の庭はこれからの楽しみにとってあります。
―本日は、 どうもありがとうございました。