286-1エストラルゴ都立大学
物件概要
- 用途
- 長屋
- 設計・監理
- ハル・アーキテクツ一級建築士事務所/竹内巌
- 構造
- RC造
- 場所
- 目黒区
- 規模
- 地上3階
物件概要
東急電鉄東横線「都立大学」駅から大通りを超え、閑静な住宅街に整然と並ぶ桜並木道を抜けた先にある路地状敷地に位置した「エストラルゴ都立大学」。道路から見通せない奥まった敷地では、一般的に画一感や陽当り不足の印象を与える建物計画となることも多いが、そういった類似性を払拭しつつ、集合住宅(長屋)の新しい考え方ができるような建物計画をおこなった。
長屋といえば等間隔やシンメトリーに設置された窓、建築面積いっぱいの閉塞感を感じる低層、狭い通路計画などが想像されるだろう。「エストラルゴ都立大学」は、アプローチの法規上必要な避難通路幅2mに少しのゆとりスペースを足し、さらに住戸玄関前も広めにスペースをつくることで、閉塞感と行き止まり感を軽減し、空間の抜け感と開放感を演出。敷地の奥行き部分を敢えてプライベートスぺ―スとして利用できるように意図した。擁壁は日本人に馴染みのある大谷石を採用し、外壁の浮造り杉板と床の石畳風タイルとの調和が、近代的ななかにもどこか日本らしさを生み出している。また窓位置もばらすことで、より単調な長屋のイメージを緩和させ、全体の構成コンセプトに納まるように工夫した。
客層テーマは「落ち着きのある暮らし」。閑静な住宅街でファミリー層も多いことから、1LDKの間取りにプラスして、テレワークやプライベートのための「住居内ソロ」を実現できるフリースペースを設けた。また、永住の賃貸マンションではなく、いずれマイホームなどを検討する準備期間としての利用も想定し計画をおこなったため、そういったスペースはある意味未来の住環境の変化への「肩慣らし」としては申し分ないだろう。
駅を降りて四季折々の桜並木道を通りながら、どこか懐かしさも感じる住まい。そこから新しい家族と新しい住空間を求めて旅立っていく。暮らす人のストーリーを想像しながら計画をおこなった「エストラルゴ都立大学」は、いつの時代もそういった今を充実しつつ、未来も見つけられる「居場所」として、願わくば「この建物に住んでよかった」と思ってもらえる存在になって欲しい。
前回の「エストラルゴ渋谷」に続き、私の想いと事業主の願いを具現化してくれる辰さんには毎回ながら大変感謝している。設計者、事業主の「こだわり」を受け入れ、全力で実現してくれる建設会社は大変貴重で、これからの時代も必ず必要となる存在だと再度強く思った。
(ハル・アーキテクツ一級建築士事務所/竹内巌氏 談)