物件概要

クライアントからの依頼を受け、敷地や隣接する厳嶋神社の歴史について調べ解析した。1086年、関東平野を横切って陸奥の国を目指す源義家の一陣が宿営としたのが、まさにこの峠だったといわれており、この辺りで最も高い地点で、迫り来る危険をいち早く察知するため見晴らしの良いこの場所を選んだそうだ。

48㎡という限られた敷地の可能性を検討するにあたり、エレベーター, 避難階段を配置すると残りはバスルーム位の広さになってしまう。あたかも入り組んだ路地のような、尚且つ狭い部分からきれいに景色が見えるようにとこのようなプランになった。昔は富士山が望めたそうだが、眺めを解析し将来を想定し道路に囲まれているためどんなに高層ビルが建ったとしても三方の眺めは残るだろうと意識して設計した。その結果、半屋外の階段で2階に上がった西側はまさに源義家がここに立っているような場所になった。

6階以上になるとエレベーターを設置しなければいけなくなることから、エレベーターなしの5階建ての建物で何が出来るか検討を進めた。階高をなるべく高くしいろんな階段の配置を検証し、最終的には廻り階段である今の形が一番効率がよく魅力的であると分かった。クライアントは日本の歴史的な建築物や茶室などに理解があり、外周に続く階段で切り取られたあいまいな空間（例えば2階のカウンター部分や3階のロフト等）を、快く受け入れてくれた。廻り階段は内外を行き来しており、建物の中だけれど路地の延長のような、外の車の音や匂いや光を感じながら自分の部屋まで帰る、半屋外のアプローチとしている。

（フロリアン ブッシュ氏　談）