株式会社辰

280-1エスセナーリオ三田

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物件概要

用途
共同住宅・飲食店舗・サービス店舗・長屋
設計・監理
桑原聡/桑原聡建築研究所
事業主
秀光建設㈱
企画
㈱モデリア
竣工年月
2023年3月
構造
RC造
場所
港区
規模
地下1階・地上4階
SHIN CLUB掲載あり

物件概要

大型マンションの開発から取り残されたかのような今回の敷地は角が45度に切り取られたダイヤモンド型の小規模変形敷地だ。つまり不動産的に説明しやすい四角形の居室を事業性を満たしたうえで作ることは不可能な土地である。さらに約180平方メートルとコンパクトな敷地内に高低差が約3.5メートルある。隣地の石積み擁壁と合わせると高低差は5.5メートルを超えていた。 JR山手線の高輪新駅から伊皿子坂をのぼり、ゆるくカーブしたその先に姿を現すこの敷地は、四周が道路と隣地の緑地に囲まれ、将来に渡り担保された空地に接している。尾根筋の山道を登り詰めた先にふと現れる見晴らしの良い休憩場所のような佇まいだ。 設備機器や配管など雑物を隠せる「裏側」がどこにもないという意味において設計条件は悪いが、環境条件は素晴らしい。従って設計的には難しいが、チャレンジしがいのある案件だった。

そこで全方向から見られることを意識しながら内部の様子をほんのり外部に向けて漂わせる立ち姿を四方からイメージしていった。その容姿は住宅のようでもあり住宅でないようでもあり、そのような曖昧なあり方をどのように組み立てるかは都市で建築をプロットする際にいつも考えていくことになる。用途は法に従って取り決められていくが、完成した建築から漂いだす在り様からくるイメージにはこうでなければいけないといった決まった取り決めはない。それらは何にも縛られずに自由であってほしい。そこは明確な差別化こそが価値であると考える不動産のプロである事業者サイドと私との間でいつも議論を交わし折り合いをつけていくことになる部分だ。 最初の入居で飲食店舗が実現しなかったことは、1番目立つファサード部分に2本の角ダクトを苦心して取り付けただけに少々心残りだったが、ゴルフのジム、インテリア会社、教師派遣会社、その他住居部分にも自営業の方々といったここを拠点とした様々な生業を持つ方々が多く入居されたようで、今後様々な表情がこの建物から生まれてくることを楽しみにしている。

ところで今回、大きな計画変更を経たことにより工事の乗り込みが当初の予定からおよそ2か月遅れたことに加え、コロナ禍による職人不足、資材不足も手伝い不安定な現場状況が続いたにも関わらず、 11 か月という目標通りの工期で無事完成引渡にこぎつけることができた。頑張ってくれた現場担当の谷田さんと井田さんのお二人、そして彼らを後方支援してくれた社長の岩本さん、営業の村田さんに深く感謝したい。


(桑原聡建築研究所/桑原聡氏 談)

 

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