240-2Arrows aoyama
物件概要
- 用途
- 店舗
- 設計
- 團紀彦/團紀彦建築設計事務所
- 竣工年月
- 2019年12月
- 構造
- RC造
- 場所
- 港区
- 規模
- 地上3階
物件概要
この建物はいつも私が「青山三角地帯」と呼んでいる青山通り、表参道と明治通りに囲まれた約50ヘクタールの三角形の街区の中にある。このエリアの中で特に渋谷駅とは反対方向の表参道寄りの地域は、昔から住宅地が多く、商業施設の多い表通りのイメージとその内側の様子とはかなり異なっている。 お饅頭に喩えるとカワとアンの雰囲気は全く違うのである。
ところで世界の都市を概観してみても、住宅地と商業地区が隣接している場所には、魅力的な場所が生まれやすい。「青山三角地帯」のカワとアンもその両方があって初めてこの場所の良さが生まれている。このエリアのアンは元の住宅地としてのヒューマンスケールを持っていながら、徐々に商業ビルに生まれ変わろうとしている。小さな美容室やカフェやデザイン事務所やギャラリーと言った青山らしい小ぶりな建物の魅力はこうして作られている。狭い道路に電柱が林立し、塀のある家とファサードが露出するマンションなどが混在して今は混沌としているが、それでも魅力的なのは、100%商業区域だったりオフィスビルであったりする再開発エリアと違って、住居と住居地域のヒューマンスケールが残っているからだと思う。
しかし大通りのカワからアンに入る時の雰囲気は、何故か表参道からの方が青山通りからよりもうまくいっている。青山通りには大きな商業ビルが多く、その厚いカワからアンに入る時のギャップが大きすぎるからだ。 「Arrows aoyama」は、aoビルの横の路地からどのように青山通りからの人を引き込むかがテーマとなった。1階から2階にのぼる階段と2階から3階に上がる階段をずらすことで、青山らしいスケール感と街に開かれた人の動きを表現したいと思った。
私はこの「青山三角地帯」に幾つかの建物を設計してきたが、表参道のカワの部分のヒューゴボスの建物とアンの部分の「Arrows aoyama」は共に株式会社辰の施工によるものだ。両方とも難しい施工技術を必要とするものだったが見事な施工精度で良い建物に仕上げることができた。施工者にも街に対する愛情があったからだと思う。青山に多くの素晴らしい建築家が良い施工者とともに参画して、いっそうすばらしい街になっていけば良いと思う。「Arrows aoyama」が「青山三角地帯」のカワとアンをつなぎ止めて青山の活性化に役立ってくれることを願っている。
團紀彦/建築家、青山学院大学総合文化政策学部教授