176-2長谷川ビル
物件概要
- 用途
- 事務所、共同住宅
- 設計
- 石原・山口計画研究所
- 竣工年月
- 2014年11月
- 構造
- S造
- 場所
- 港区
- 規模
- 地上7階
物件概要
昭和52年に建てられた機械商社のビルの建替え工事である。上層階にオーナーがお住まいになっておられ、設計コンペで、3層メゾネット+1フロアの住居と3層の事務所を内階段で結んだ我々の案が採用された。敷地は8階まで建てられる余裕があったが、賃貸住戸を組み込むと、屋外階段を付ける条件が加わる。使い勝手も悪くなる。余裕を残したところが良かったようだ。
既存のビルがRC造だったため、当初、計画道路が入っている前面の3層は、鉄骨造でいくことにしていたものの、奥の7層はRC造の可能性も残していた。しかし7本の杭の解体費が思ったよりかかることや、マットスラブにしても、杭の上半分は解体しなくてはならず、最終的には既存の杭を避けた、鉄骨造でいくこととした。結果的に、コンクリート型枠工事業者のひっ迫という環境を避けることになり、オーナーにはご心配をかけたが検討時間も無駄ではなかっただろう。
場所は「聖坂」という由緒ある通りである。モダンで都会的なデザインではあるが、バルコニーの目隠しや、上層階の手摺などは縦格子にして、江戸の昔の雰囲気を想起させ、エントランスホールにも、江戸小紋を思わせる白いモザイクタイルを施している。
オフィス部分は、1階は駐車場とエントランス、2階がメインオフィス、3階が応接室と倉庫である。この3層については前述の通り、一部を将来的に撤去する可能性があり、構造体はその部分は繋がっていない。地震の時、振動が伝わらないように2棟の建物を完全に切ってエキスパンションという特殊金物で継いでいる。このように外からはわからないが、意外と施工が難しいのである。まず、不整形の敷地いっぱいに建物を建てているので、外壁に直角の部分が一つもない。設計図を描く方はいいが、直角でないことは施工面では手間を呼ぶ。できるだけ広く見えるようにと半円形にしたオフィス部分の内階段も、鉄骨造で半円形の壁を作って穴を閉じるのは簡単ではない。そして、外からは同じように見えるが、内部は各階ともプランがすべて違う。
住宅部分は、内装に木をふんだんに用い、ペアガラスや2重貼りの石膏ボードなど、遮音性能や断熱にも配慮して、心地よい空間を創出している。
(菅谷肇 代表取締役 談)