168-2富ヶ谷集合住宅#2(カトレ・コート)
物件概要
- 用途
- 共同住宅+長屋
- 設計
- 木下道郎/ワークショップ
- 竣工年月
- 2014年1月
- 構造
- RC造(10タイプ12戸)
- 場所
- 渋谷区
- 規模
- 地下1階、地上3階
物件概要
同じ富ヶ谷のすぐ通りの先で、2012年9月に竣工した「富ヶ谷集合住宅#1」=「Moderia Brut YOYOGI UEHARA 」は、現場事務所をお借りしていたアパートのオーナーS様に、気持ちの変化をもたらした。既にハウスメーカーの設計で老朽化したアパートの建て直しを予定されていたS様に、我々、辰の営業担当者と私は、辰の社長の強い勧めもあって、新たなプランを持参した。S様は、その隣のアパートもハウスメーカーで建てられており、そういう事業家にとっては馴染みがない提案だろうから、結果はあまり期待していなかった。
しかし、奥様がプランを気に入られた。またS様自身、建築にちょっと余分に投資をすることで、結果的に良いものが還ってくる、と「#1」を見て実感されたのかもしれない。もちろん、ハウスメーカーと違って、容積率をしっかり使いきろうとすれば、事業規模は大きくなり、コンクリート造は木造よりは高くつく。坪単価は当然高くなる。しかし、それでも冒険してくださったのである。
建物は、条件が厳しいため、シンプルに積み上げるわけにはいかない。10タイプ12戸のバリエーションを用意することになった。前面道路から直接入る住戸、脇のアプローチに面した住戸はバイクや自転車を直接部屋に入れることができる。敷地内の中央通路と階段を使って入る住戸や屋上に小さなペントハウスとしての住戸も用意した。それぞれ個性を引き出せるように工夫した。 「土間」も一つのテーマである。室内全部をフローリングでまとめるのでなく、部分的に設けたコンクリートの打ち放しの床を土間のようにアウトドア感覚で使ってもらう。普通の賃貸住宅ではなかなかできない暮らし方が受けるのではないか。
辰で2003年施工した、当事務所の入る「二軒家アパートメント」もまた、バリエーションに富んだ賃貸住宅で、なかなか空きがない人気物件である。オーナーが所有するペントハウスは、入居者たちも巻き込んだ利用で、最近の集合住宅では珍しい良好なコミュニティを形成している。建物の前に越してこられた花屋さんが、自宅として最近空いた部屋に入られ、建物の植栽計画にも協力してくれることになりそうである。収益から外れた部分でいい展開を生み出している。
この富ヶ谷も、「#1」の先の通りには、建築家の作品が結構建っている。建築の魅力で地域を引っ張っていくことができる。思いもかけない展開でリンクした2つの建物を見ながら、そんな将来に思いを馳せている。