149-2百人町の家
物件概要
- 用途
- 専用住宅
- 設計
- 岡本欣士
- 竣工年月
- 2012年6月
- 構造
- RC造
- 場所
- 新宿区
- 規模
- 地上3階
物件概要
自邸を建てるにあたり、「狭小敷地の3 階建て」という限られた面積のなかであっても、できるだけおおらかな空間にしたいと思った。 家族の気配が常に感じられるように、部屋を仕切らずに建物全体を「ひとつながりの空間」とすることをめざし、吹き抜けや階段を用いて各階を積極的につなげている。
住まいの中心は2 階のワンルームのLDK。キッチンはLDの「かなめ」となるよう意識した。子供が小さいうちは親は子供から目を離せないし、調理や皿洗いの時間も貴重なコミュニケーションの時間であると考え、LDの一部のような開かれたキッチンとした。使いこなされた楽しげなキッチンはインテリアとしても、住宅が活き活きとした空間に育っていくための大事な要素と考えている。 垂直方向では、3 階の廊下状のライブラリーや洗面所、テラスがリビングの天井髙4mの吹き抜けを介してつながっている。斜め天井のライブラリーは、2階と絶妙な距離を保った1人になれる落ち着いた屋根裏部屋のような場所として子供の勉強の場や仕事の場となるだろう。
その先の洗面所はモザイクタイル貼りとして、水回りという場の性格を強めた。設計当初は、モルタル仕上げで考えていた浴室にも、結局、汚れや掃除の手間と浴室らしさを考え白いシンプルなタイルを貼った。 斜線制限等から階高を押さえる必要があったが、意識的に天井の低い「縮んだ場所」と気積の大きな「ふくらんだ場所」をつくり「ひとつながりの空間」に多様な場を作ることを心がけた。「縮んだ場所」は、その先の「ふくらんだ場所」につながったり、見えたりすることで狭さや窮屈さよりむしろ、落ち着ける穴倉から外界を臨むような居心地の良さを味わえる場所として考えた。 例えば1階の玄関土間は、天井高1930mmとかなり低いが、一段下がった洗面所や吹き抜け・大きな窓が見えていたり、階段越しに視線が3階まで抜けている。3 階のライブラリーは、廊下状で北側斜線の影響で天井がかなり低い部分もあるが、大きな吹き抜けに面し、空を感じられるハイサイドライトが設けられている。
また、いろんな場所がみえたり、見られたりと視線が別の場所に届くことや、1 ,2 階では回遊できる動線を作り、行き止まりをなくすことで、全体に広がりが感じられるよう工夫している。 防火地域のため、RC造を選択しており、住宅の仕上げは大きな骨格であるRC打ち放しの表情がベースとなる。打ち放しは、一般的にクールな表現と相性がよいが、ここではカジュアルな住宅をめざし、吹き抜けにRのラインを用いて、RCのシャープさに対しやわらかさを組み合わせたり、ラワン合板仕上げの壁や栗の端材を寄せ集めた無垢のフローリングの床といった素朴な木の質感を持ち込んでいる。木質の壁や床の仕上げは、自然系の木材保護塗料を家族や友人達とDIYで塗装した。