株式会社辰

132-2自己責任の家2

物件概要

用途
専用住宅
設計
矢崎俊昭/矢崎設計
竣工年月
2011年3月
構造
RC造
場所
都内
規模
地下1階、地上3階
SHIN CLUB掲載あり

物件概要

2004 年、「Shin Club Vol.50」でご登場いただいた「自己責任の家」の建て主 H 様は法律家。人任せにしないで、ご自身もCAD を扱いながら基本設計を行い、こだわりの住宅を建てられました。しかし、このたび、お子様の通学を考え、新たに都心に戸建住宅を建てられることになりました。郊外の庭付きの戸建住宅から、都心型の奥行きのある敷地となりましたが、今回も H 様は、建築が大好きな奥様のお母様のアドバイスをいただきながら、ご自身で基本設計を行いました。施工は、再び弊社にご用命をいただき、担当も気心の知れた N 主任を指名されて、この3月、工事は無事終了。表題のごとくうれしい感想をお寄せくださったので、抜粋してご紹介します。

<外断熱・RC、そして階段のプラン>

以前の家では、北海道の外断熱協会から資料を取り寄せたり、『建築知識』などの雑誌を読み、あらゆる外断熱関連資料を集めて研究した H 様。今回も外断熱 RC 造とし、K 部長の VE 提案により、東邦レオの「エコサーム工法」を採用しました。K 部長は開口部についても重要な提案をし、競業他社にない VE 提案にしびれたと H 様。 最初は奥行きが 26m もあるので、これはプールしかないと『鰻の寝床プールハウス』を考えたものの、「掃除が大変よ」というお義母様の言葉にあっけなく頓挫。次に思いついたのは、安藤忠雄氏の『住吉の長屋』よろしく、真ん中の部分を外部にして、2棟の建物を造り、外に出ないと隣の部屋に行けない構成。大木が茂る両側の隣家の庭を存分に借景できます。しかしご家族は、当然反対。北側斜線のために中庭の横に2つの建物をつなぐ廊下と階段が来るのが必須となりました。 『都市、住宅、中庭』といったキーワードで『住宅特集』、『住宅建築』、『Confort』など様々な本を買い求め、京都の町屋も参考にして、最初は中庭に面して階段を設置した H 様。しかし、北側斜線についての考え方に相談役の M さんが言及、屋上への階段をコンパクトにまとめて、中庭側に景色を楽しめる廊下を持ってくることが出来ました。「やはり M さんは頼りになる」と H 様。

<温熱環境>

前回は、内装は出来るだけ切り詰めて、躯体と断熱材と開口部に予算を割り当て、「実は開口部の放熱処理こそ一番効果がある」と理解した H 様は、吹き抜けの中庭に面した1,2階の開口部に断熱レール付きのハニカムスクリーンを設けて、その効果を見ることにしました。 また、新たな工夫としては、人が絶対通れない細窓を設置、巨大換気扇2機を最上階の屋上出口付近に設けたことがあげられます。 夏の夜、この細窓を開けて換気扇を廻し、冷えた空気を引っ張り、躯体を冷やそうというお考えです。外断熱 RC 造の蓄熱性と自然を利用した、エコロジカルな試みです。

<中庭>

1 階の中庭には、連続した広がりを感じさせるよう、エントランスや奥の和室前の床と同じタイルを採用し、外壁となる東側の境界は、20cm 四方のステンレス棒鋼の角格子にして採光・通風を確保しています。ツバキ、桜など隣家の豊かな植栽を十分に取り入れられる借景を考慮されました。施主検査の時点でも解決していなかった内部との間の溝の処理には、辰の社長の一言で玉砂利に決定。「すばらしい解決方法」と H 様。

<地下>

地下は、ホームシアターとしても使える大きな多目的スペースとワインセラーがあります。天井が 3.4m と非常に高いのは、「当初はがらんどうにして、テニスのサーブ練習をするつもりだった」と H 様。多目的室について「ホームシアターにするなら遮音よりも吸音が重要」との相談役 M さんのアドバイスにより天井には MK ボードを張り、吸音とともに調湿、コンクリートから放出されるアンモニアの吸着も企図しています。

<エタノール暖炉>

薪ストーブの人気が高まっていますが、今回 H 様がリビングに採用されたのは、今一番新しい、「エタノール暖炉」です。煙突の設置も不要、有毒ガスも発生させず、インテリア感覚で楽しめます。国内代理店での取り扱いがなかったので H 様がオーストラリアのメーカーに連絡して機器を輸入し、自らマントルピースを設計、弊社 N 主任の実施設計により、製作しました。

<セキュリティ>

エントランスのシステムはもちろん、人が入れない窓やフェンスなど防犯には細かく配慮され、大きめの開口部はシャッターで開閉します。

<おわりに>

「自己責任の家1」当時よりもさらにパワフルにメールを送り込む H 様に対し、IT 化の進んだ N 主任が迅速に対応。 「N 主任は本当によくやってくれた」と H 様から感謝の言葉をいただきました。H 様、ありがとうございました。