118-2テラス下目黒(下目黒の森テラス)
物件概要
- 用途
- 長屋
- 設計
- 室伏次郎/スタジオ・アルテック
- プロデュース
- アーキネット
- 竣工年月
- 2009年11月
- 構造
- RC造壁式ラーメン構造
- 場所
- 目黒区
- 規模
- 地上3階、地下1階
物件概要
敷地は、東急目黒線目黒不動前駅の昔の商店街から徒歩10分、閑静な住宅街にあり、江戸時代からの道が、街の界隈を形作っている。<林試の森公園>の緑が眼前に広がる傾斜地も、景観の変化に富み、歩きながら町と自分のスケール感をごく自然に感じ取れる、人間形成に非常にいい場所である。
都内にそのような地域が希薄となっている昨今、子育てをするには、整然とした街並みの新興住宅街にはない良さがあり、このコーポラティブハウスの参加募集に際して、そのようなコメントをしたところ、子育て世代の応募が実際に多くなった。建設中に新たな家族を迎えた居住者たちとの上棟式の記念写真撮影は楽しいものとなった。
一戸建ての多いこの地域で、12戸のマンションは、現実には周囲のスケール感よりもかなり、ボリュームのある建物となる。この周辺との折り合いをどのような形でつけるかが問題であったが幸い敷地の南側の接道が緩やかなカーブを持っていたため、湾曲を持たせた外殻とし、襞のようにランダムにバルコニーを飛び出させるファサードを形作った。
この「ランダムバルコニー」には、コーポラティブという性格上、ものづくりの気持ちを一つにさせる部分として、また法規的には長屋形式で共有スペースがないため、居住者同士の顔が見える共有性を位置づけた部分として、機能させた。一方的に開くのでも閉じるのでものなく、選択によって居住者にコントロールできる距離感があり、設計途上でプライバシーについての意見も一部出てきたが、実際に建物が建ちあがってみると、こちらの意図をよくご理解いただけた。多くの分譲マンションに見られる「いかに視線をさえぎるか」というコンセプトは、人間のかかわりを拒否しているとも思える。
昔のコーポラティブは、土地探しから行っていたが、ゼロから事業を開始するには大変な労力が必要だった。またコミュニティ中心であり、参加者の調整には一定の努力が必要だった。だが、アーキネットが立てたビジネスモデルは、建築家の力量で建物、環境の良さを提示、「賛同する人はどうぞ」というスタンスで会員を募る。次々とシステムの問題を解決しながら、新しい企画を行っている。下目黒の前には、自由が丘と世田谷で協働させていただいた。分譲マンションにはない家作りは、自分で自分のできることを納得してやりたい、という人々の要求に応えたものだ。それは住まいに必要な原点に違いない。