株式会社辰

104-2AOYAMA GARDEN(CONFECTIONERY WEST)

物件概要

用途
店舗・工場
設計
樫村建築設計事務所
構造
RC造
竣工年月
2008年10月
場所
港区
規模
地上3階
雑誌掲載あり

物件概要

長年この地で洋菓子店とカフェを営まれていたお店の建替え工事である。 築 40 年となる建物の改修の必要性や、 隣地を取得する機会を得て新たに一貫工程が可能な工場を造ることを目的に、 計画は進められた。 1 階にカフェと菓子販売コーナー、 2 階に従業員の休息室、 3 階に工場が設けられている。 (2 階の 1 部にはテナントとして、 別にイタリアンレストランが入る) 1 階のカフェ (50 席、 テラス 16 席) は、 2004 年出店した日本橋三越新館のレトロカフェと同様、 「大人の癒し空間」 としての雰囲気を大切にしている。 和洋折衷のデザインでまとめられたカフェの開口部は障子をイメージした窓。 間接照明の柔らかい光が店内を包む。 ちなみに銀座本店も 60 年前から間接照明で、 日本ではじめて間接照明を導入した飲食店ではないかと依田社長。 高齢者に配慮して店内はもちろん、 建物脇の駐車場からも直接スロープで菓子店やカフェに入ることができるよう、バリアフリーになっている。 低めのイスは、背もたれも大きく居心地がよい。

1 階テラスの席に移ると、 高原を思わせるような庭が歩道からの視線を和らげ、 その向こうの道路の反対側に広がる青山斎場の鬱蒼とした緑を眺めることができる。 2 階の従業員休憩室は、 早朝から作業する職人が前夜から待機することができる和室と、 簡単な食事を作ることができるキッチンや飲食スペースが用意されている。 3 階の工場では、 厨房を置くために、 床は通常より厚めのスラブになっている。 これまで日野工場で行ってきたスポンジ生地製作と六本木工房で行っていた生クリーム細工が一箇所に集められたことにより、 約 4 時間生菓子の製作の時間短縮が図れるほか、 スフレやクリームブリュレ、 フルーツグラタンやフォンダショコラなど、 パティシエによる熱々のデザートを提供できるようになる。


社長のこだわり
竣工前に、基本設計を担当し、長年、同社のパッケージや店舗インテリアなどのデザインディレクションを手がけてきた、 デザイナーの倉澤一郎氏が、この 3 月急逝されるというアクシデントがあった。 しかし、 建物の基本設計はほぼ終えており、 その後は、 細部に依田社長自身のこだわりが生かされていくことになった。 ほとんどの照明は社長が選択され、 特にカフェ中央のメインシャンデリアは、 ニューヨークの店でオーダーしたもの。 本体はスペイン製のアラバスターという大理石、 金具はイタリア製。 注文してから到着まで7ヵ月要した。 シックな店内を美しく照らし出している。 前庭には、 雨水利用システムを入れ、 ペット同伴のお客様も入れるよう、 犬のリーダーをつなぐフックも 3 箇所用意されている。 「リニューアル ・ オープンを心待ちにしていらっしゃるお客様を早くお迎えしたくてたまらない」 といった社長に、 テラスでコーヒーをいただく最初の客としてお話をうかがうことができ、 光栄であった。