株式会社辰

085-1I-FLAT

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物件概要

用途
専用住宅+事務所、アトリエ、スタジオ
設計
松尾宙(石田敏明建築設計事務所在籍)+松尾由希(フリー)
構造
S造+一部RC造
竣工年月
2007年3月
場所
板橋区
規模
地上4階
雑誌掲載あり

物件概要

敷地は、桜並木の美しい川沿いの遊歩道に隣接している。春の花、初夏の緑や真夏の日陰の涼しさ、秋の紅葉など、この桜を堪能しないわけにはいかない。建物は鉄骨ALC造で、川に面する北東側に開口部を設けた構造である。建物入口前の南側には大きな開口部をとらないでほしいとの近隣からの与件もあった。

「団塊世代の両親、若い娘夫婦とその子供、独身の息子、そして、時折地方から訪れる年老いた祖父母」という4世帯の家族構成は、将来にわたり固定的な関係として描かれるよりも、今後もいかようにも変化する関係としてフレキシブルに対応できるプランを考える必要があった。また、家族それぞれが自宅でできる自分の仕事を持っている。会社勤めの父親はやがて迎える定年を機にこれまでの働き方を変えるかもしれない。その妻は革工芸品の作家であり、娘夫婦は現在それぞれ別の事務所で建築設計の仕事を行っているが、将来は独立して夫婦で事務所を構える予定でいる。子供もまだ小さく、自分たちの子育てを夫婦2人でシェアする上でも、職住接近はベストの選択だと考えている。その弟は音楽関係の仕事をしており、自宅でのミキシングスペースを必要としている。このような家族の仕事スペースを1階にとり、2階を若い夫婦とその弟、3階を両親、4階を祖父母の住居とした。また長期のライフサイクルを見据えて、2階の2住戸は賃貸として貸し出せる計画としている。各住戸へのアクセスは、外部動線(下足)として建物中央を貫く直階段と内部動線(上足)としてのエレベーターが用意されている。このエレベーターがあることによって、一番環境の良い4階に高齢者の住居を配置することが可能になった。

開口部に関しては、1階は半地下となっていること、壁面が上部階より後退していることなどによって、開放的でありながら落ちついたスペースとなっている。2階は外側にエキスパンドメタルのフェンスを設け、その内側に外廊下をおいて直接外部から覗かれないようにしている。3階は、川に向かって大きなオープンデッキを張り出させ、家族全員が集まれるパーティースペースとした。さらに4階は足元から天井までのフィックス窓にして、部屋から思う存分桜を眺めることができるようにしている。下層から上層にいくにつれ、開口部は大きくなっていく。

室内は、白を基調にシンプルな佇まいになっている。3階の床は、和式の生活を好む両親のために桐のフローリングにしている。桐は空隙性があり、柔らかく断熱性があるので、梅雨時も結露せず冬も暖かい。また一部トップライトを設けて明るさを確保している。家族ではあるが生活時間帯が多様であることを考慮して、下層階の床は遮音性の高いコンクリートのスラブとしている。最上階の屋根だけはALCとし、重さを軽減して構造の上から配慮している。外壁は、ALCにエクセルジョイントを金ゴテで仕上げ、さらにランデックスコートを色調を調整しながら塗布している。レベルが少し低くなっている1階のエントランス部分は、四角の躯体からコンクリート造で張り出させ、黒のペンキを塗ってアクセントとしている。反対側の西側キャンティ部分は、車2台を停められる駐車スペースとし、そこから裏口を通って建物内部へ進む共用通路は、緩やかなスロープにして車椅子や音響機器のスムーズな移動に対応させている。

(松尾宙氏 談)