077-1Y-house(松涛の家)
物件概要
- 用途
- 共同住宅
- 設計
- 内海智行/ミリグラムスタジオ
- 構造
- RC造
- 竣工年月
- 2006年5月
- 場所
- 渋谷区
- 規模
- 地上2階 地下1階
物件概要
3 世帯の家族が都心における生活の拠点として利用する住宅である。
親世帯、息子世帯、娘世帯とそれぞれ生活サイクル及び家族構成が異なるため、共通の玄関ホールをはさんで平面的 ・ 断面的に距離を確保することで世帯間相互の生活自律性を確保している。そのため、一戸建ての住宅でありながらきわめて共同住宅に近いユニークな構成となっている。
敷地は大谷石を積み上げてつくられた高い擁壁によって前面道路と隔てられていた。前面道路より 3 メートルほど上がった位置に地盤面があるため、通常であれば1階とみなされる道路に直接面したアクセス階を地下階として扱う事が出来た。これにより、第一種低層住宅地域にありながら総3階建てと変わらぬボリュームを確保している。
敷地は高級住宅地の入り口に位置しており、新しく生み出される建物にはそのエリアの顔として、場所性にふさわしい強度と品格を求められた。
構造は RC 造で、地下階である擁壁部分は杉板化粧型枠打放し仕上げとし、擁壁の上に乗る2層の地上部分は通常の化粧型枠仕上げとした。
大谷石の擁壁に代わる新しい擁壁には、杉板型枠を縦横ランダムに使用することで新しい表情をもったパターンを生み出すことに成功した。現場の協力によっ て実現した 50 ミリ幅という細身の杉板は、新しい擁壁に地層がそのまま隆起して露出したかのような繊細な表情を与えてくれた。
対照的に、地上部分のファサードには、全面ガラスのカーテンウォールを与えることで、都市景観としての全体性を獲得する事を目指した。このファサードはほぼ真南を向いているため、大きな熱負荷を軽減させるためにすべてのガラスに LOW-E ガラスを採用している。また、個人住宅としての高いプライバシー性を確保するため、カーテンウォールの方立にはルーバーとして用いられるアルミ型材を使用した。このアルミルーバーは奥行きが 20 センチほどあるため、 都市からの角度を持った視線を非常に効率良く遮るのと同時に、奥行き感のあるリズムをファサードに与えている。
また、同時に厳しい西陽の日射を抑制するのにも効果を発揮している。さらに内部では、「インナースキンハウス」(2001 年竣工、施工 : 辰)で採用した膜材をカーテンウォール内側に使用してい る。前回からさらなる改良を加え、ガラス面と室内空間との間に設置され、室内の良好な熱環境を提供するように考えられている。それぞれの世帯の内装は、RC 躯体の堅固なスケルトンに変化を許容する柔軟なインフィルを組み込むように作られており、相互間の自律性が高いため、各住まい手の要望や仕上げの好みなどを最大限に反映させて作られている。
(内海智行 談)