062-1Forged
物件概要
- 用途
- 共同住宅
- 設計
- 鈴木基紀/空間設計社
- 構造
- RC造
- 竣工年月
- 2005年4月
- 場所
- 目黒区
- 規模
- 地上6階
雑誌掲載あり
物件概要
この建物は目黒区青葉台、山手通りと目黒川に挟まれた路地に面して建つ。
用途は、5,6階を建築主の専用住宅とする7世帯の集合住宅であり、コンクリートを主体としたデザインである。
構造は鉄筋コンクリート「ラーメン構造」。昨今流行りの「壁式ラーメン構造」のデザイン的な魅力に後ろ髪をひかれながらもこれを潔く見送り、この規模に最もふさわしい「従来」の「ラーメン構造」を骨格として選択した。
さて、建築主はこの地、目黒区青葉台で3代続く工務店を営んでいる。
この建物の設計・監理は一貫して建築主との協働作業で進行した。建築主は都内における類似用途のデザインをほぼ調べ尽くし、様々なアイディアが俎上に載せられた。基本設計段階では「思考錯誤」が連続したが、今振り返ると、建築主との距離を縮める格好の時期でもあった。
着工後も幾多の紆余曲折があったが、今、こうして完成した姿を眺め、この建物に「凛(りん)とした佇まい」、ある種の「凄み」を感じることがあるとすればそれは、プロセスにおける「堆積された思考錯誤の厚み」によるものかもしれない…。
建物名は「Forged」と命名された。鍛造(たんぞう)という意味で、「金属を叩きカタチを作り出す」という意味である。鋳造(ちゅうぞう)と対をなす言葉であるが、鋳造に比べ、鍛造は「肉薄の緊張感」を想起させる。かつてルイス・カーンは鉄筋の役割を「不思議な魔術師」と形容した。建物名「Forged」は、ウルボン筋(高強度の鉄筋)の採用により実現した、美しい構造体への「ささやかなオマージュ」でもある。
最後にこの場を借り、工事主任の畠中広隆氏をはじめ、竣工間際まで設計変更の受け入れを辛抱強く許容された工事関係者に敬意を表し、感謝の気持ちを伝えたい。
(鈴木基紀 談)