株式会社辰

045-2IDÉE ROOMS UEHARA(イデールームス上原)

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物件概要

用途
共同住宅
設計
㈲高山企画設計
総合企画
(株)開地総合企画
企画・デザインディレクション
IDEE R-project
構造
RC造
竣工年月
2003年11月
場所
渋谷区
規模
地上9階
雑誌掲載あり

物件概要

家具製造販売、室内デザインを手がける「イデー」は、2年ほど前から東京都心部の再生を図る「IDÉE R-project(イデーアールプロジェクト)」という、リノベーション(修復)事業を展開してきました。例えば廃墟として見捨てられていたオフィスビルをリフォームして、キッチンやシャワーのついたSOHOにしたり、ギャラリーにしたりして、新しい価値を見出すことを提案しています。

今回ご紹介する「IDÉE ROOMS UEHARA(イデールームス上原)<日美ビル>」は、「そこに住む人のライフスタイルからイメー ジしてデザインする」という、新たなプロジェクト「IDÉE ROOMS」の第1号として、辰が施工しました。総合企画は開地総合企画です。

デザインディレクションを手がけた「IDÉE R-project」の倉持正之氏にお話を伺いました。

―新聞や雑誌でリノベーションがだいぶ取り上げられていますね。

倉持:ええ、いろいろお話をいただいていますが、「IDÉE R-project」が提案しているのは、むしろ「Re-think(再考する)」ということなのです。「オフィスビルを住居に転用する」とか、「流行になっているので」と不動産物件を持ち込まれて、必要もないのにただ転用すればいいと勘違いされていることも少なくない。でもわれわれの提案は「いろんな意味でのカタチを考え直す姿勢そのもの」ですね。

例えば「オフィスを住居に転用する」ときに、そのメリットを考えるとします。多くの人が、経済的効率や稼働率など、既成のものからなかなか抜け出せない。それだけではない別の価値があるではないか― それをわかりやすい形で人に伝えていくことが大切です。利益もあがり、世の中のためになる、そういう意味付けをこれからは自分で作り出していかなくてはならない。我々はトータルで状況をデザインすることにこだわっているのです。

―今回「IDÉE ROOMS」という、新築の賃貸住宅を提供する新たな一歩を踏み出しました。

倉持:コンクリートの打ち放しや吹き抜けの空間、ガラス張りのトイレのマンションが流行っていますが、建物自体の空間をデザインするより、生活そのものをデザインする方が大事じゃないか、と我々は考えるわけです。「UEHARA」も建築として完璧じゃなくてもいいという思いがある。建物をカタチ作っていくのは、住まい手であり、提供する環境です。シンプルなデザインの建物の中に、住居やテナント、それらをどういうふうに営業するのか、生活にどう関わるのかを一つ一つデザインしていきたい。

「UEHARA」では、そこに暮らす人のために、1階に飲食店を入れました。人気の代々木上原というスポットです。居住者は帰宅も夜遅くなりがちで、家に帰ったら「何かちょっと食べたいな」という気分になる。さっぱりと蕎麦でも食べて休みたい、でも普通の蕎麦屋は夜8時には閉めてしまう、そんなときおいしい蕎麦屋が近くにあったら便利でしょう。そして休日、遅く起きて、オーガニックな食材の店でゆっくりと朝食を摂る、そんな暮らしをイメージしています。

1階の「O.R.G. food bar」は、平日は深夜まで、週末は朝からの営業時間となっており、まさに「地域密着型の food bar」になっている。また飲食プロデューサー中村悌二氏の手がけた、蕎麦屋「山都」では、おいしい蕎麦だけでなく、日本酒も楽しめる酒肴が用意されている。

―話題は変わりますが、 「IDÉE R-project」を始め、IDÉEに倉持さんのように若い人が集まる秘密とは何なのか、聞かせてもらえますか。

倉持:もちろん、社長(黒崎輝男氏)の個人的な魅力はあります。既存情報に振り回されない、バランス感覚がよく、好奇心は旺盛だし、情報をキープする力がある。加えて、会社が大きくなっても企業体質にならない、ということがあげられます。

例えば、TDBなどを見てもらってもわかりますが、黒崎の展開する仕組みは、企業というシステムにとらわれないこと。自分をはじめ、Rにはもともと独立して仕事をしていたスタッフが多く、ひとつの組織に属していながら自分で何かをしようという気持ちが旺盛で、それが強みになっているように思います。常に本質を共有しあっているか、確認をしています。実は飲み会であったりするわけですが(笑)、徹底的に話し合う。

社会的コンバージョン(変換)の波が顕著であり、一方でリノベーション(修復)の波が派生しています。その中でもIDÉEが先んじているとすれば、その ネットワークの作り方のユニークさだと感じますね。

―それが出来ているのはなぜでしょう。

倉持:もともと家具メーカ―で、自分たちで作って売って、「入口から出口まで最後まできちんとやる」という行為が身についている。売るという行為まで責任を持とうとしているため、メディアについても非常に興味を持ちながら、力を入れているということです。

これらのものを分断し効率化を図ってきたのが、これまでの日本の企業のあり方でした。しかし、一見非効率化に見えるものの中により効率的に進める何かがあるのではないか、と考えます。 我々がやりたいのは、「ルールを変える」つまり「マイナス要因をプラスに変える」、「発想と視点を転換する」ことなのです。建築についても目に見える設計、施工の部分の仕事ではなく、企画・マネジメントなどディレクション(方向性)を明瞭にして協力していくのが、これからの仕事の仕方だと思っています。

-本日はありがとうございました。

(TDB:東京デザイナーズブロック。3年ほど前から、本社のある青山界隈でイデーが年に1度開いている、クリエーターの発表の場。国内外からさまざまなアーティストが参加し年々大きくなっている。FMラジオなども巻き込んで街中を若い人が歩き回る風景が展開される)